ハルノの日々の話

「お題」と詩と日々の話

高齢の母、正体がばれる

 うちの母は80代。

脳梗塞を2回、脳出血を1回しているもののまだ自分のことは自分でできる状態。さすがに直近の脳出血で半身に麻痺を残しているがまったく動かせないわけではなく、しびれが常にある程度らしい。

そんななか、先月室内で一人でいる時に転倒してしまい二度目の<圧迫骨折>で入院中。先回は背中、今回は腰。日に日に体の動かない部分が増えているのだが、それよりも子供たちが困っているのが母の性格だ。

 母は昔から<健康オタク・自然派オタク>だった。

といっても先立つものがない家庭だったので”なんちゃって”のつくオタク。本当に余分なお金が捻出できなかったときは健康食品などは買えず、自分たち子供には母の関心事はあまりわからなかったのだが、いつからか本棚に「薬を飲まずに治せ!」みたいな本が並ぶようになり、クエン酸やら<卵油>(そういえば最近みない)など買っては自分だけでなく離れて暮らす私への手紙や荷物にも入れてくるようになった。そしてついに母が自分で年金がもらえるようになるとそれに拍車がかかる。

 ちょうど2年前くらい脳出血での入院先に「コレコレのサプリを持ってきておいてほしい。あれがないと便秘になる」と母に言われ、困った妹が相談してきたことで判明したのだが、1本7千円も8千円もする謎の健康食品を毎月買っていて、さすがにそれを続けられては困ると問題視するようになった。最近、自分が「現在は何を飲んでいるのか?」と確認したところ「もう今はこれだけ」と別のもう少し手頃なものに変わっていたが今回の入院中、実家を訪ねて同居している他の兄妹に聞くと本当は1種類ではなかったのだ。兄が次から次へテーブルの上に出してくる。

買い物自体にも問題があるのだが、私が嫌なのは母が子供に対して”ごまかそう”としているその態度だ。「子供に怒られるから」というのがいろいろなところにあらわれる。母の中ではつじつまが合っているのだろう。内臓の動きが悪く、便秘になる→便秘でトイレに行くと血圧が上がりやすい→また倒れたら迷惑をかけるし、次は最後かもしれない→でも薬はよくない!(どこかから仕入れた情報)とか。ところが母は間食もやめない人なので本当は何かプラスで摂り入れるのではなく、今好んで食べているものを減らしていく方が正解なのでは?と思っている。お菓子にお金を使い、それをフォローするために健康食品を摂る。まさに本末転倒だ。

 

 今回の入院、面会に行くと毎回最後に「さみしい~」と目に涙を浮かべている。ウソ泣きではないのだろうけどもともと母はそんな女性らしいことを一切しない人だ。どこかに「優しくしてほしい」アピールの気持ちが”盛られている”のだろうと察する泣き方だ。ちょっと本気で説教するとぷいっとして「あ~もういい!もういい!血圧上がる!」と自分の高血圧を人質のように使う。せめて冷静にお互いの要望を謙虚に話せる状態でいてほしいがプライドとか負けん気とかこれまで母を支えてきたものが悪い方へ動いている。

 対処方法はわからない。ネットでアドバイスを探しても「まずは会話」とか「ある程度好きにさせる」がほとんど。だけど、相手が聞く耳持たなかったり「子供に指図されたくない」と思っていたら会話どころではないし、出費が関係していたら「好きにさせる」にも限界がある。こっちも面と向かって話すと怒りの気持ちがわいてくるし。

 今、策を練っているのだが私は時々ちょっとした漫画付きの手紙を書き、母はそれを喜んで読むので久しぶりに超大作を書こうかと。でも、笑って終わりでは困るのでいかにポイントをはっきりと描くかはなかなか大変。そうこうしているうちに別の問題が出てきませんように…。

 

 高齢者には<人格の先鋭化>というものが見られるらしい。ガラッと人が変わるのではなくこれまでもあったその人の特徴が判断・忍耐力・知的能力などこれまでコントロールされていたのが抑制されず放たれるイメージのようだ。確かに合点がいく。母の人生は結婚してからはいろいろと苦労が重なった。娘としてその苦労を知っているので優しくしてあげたいが爆発されるのは困惑、である。80代にしてその正体がばれたといった感じだろうか。

(あと、高齢者の不安な気持ちにつけこむ健康食品業界にも腹が立つ。)

 

同居してくれている兄妹には感謝しかない。私にできることをする。