ハルノの日々の話

「お題」と詩と日々の話

母が持たせたささやかな嫁入り道具

わたしの嫁入り道具

わたしの実家は経済的に余裕のある家ではない

わたしが結婚する時も「何か持たせてあげよう」と母が用意したのは

キッチン用品

自分が使って良かったもの

長く使えるものを数点選んでくれた

 

セラミックのおろし器と

スライサーと

圧力鍋

全部合わせて3万円くらい

母の精いっぱいの結婚祝い

 

多分私なら買わなかったものたち

もちろん20年たった今でも大活躍で

買い替える必要もないのだけれど

それに込められた主婦業30年の経験と知恵と

娘への愛情を思う時

もはや

どうやったら捨てる時が来るのか想像できないくらい

きっと私は捨てられない

 

令和六年元旦

テレビに映る

地割れと

津波

炎の中にも

誰かの小さな”一生もの”が

たくさんあったのだろうと思うと

その失われた<形あるもの>と<形ないもの>とのすべてに

ただ心が痛くって

 

そんな形で

”一生もの”とのお別れが来ないよう

願うことしかできないけれど

今日も大事に

圧力鍋で

お米を炊く

 

新しい年

 

 

 

 

今週のお題「一生モノ」